· 

なぜ高性能の家が増えてきているの??まとめ

こちらの記事は『なぜ高性能の家が増えてきているの??』を1ページにまとめた記事のため長文です。
あらかじめご了承ください。

 

記事コンテンツ

・住宅歴史

・住宅需要編

・日本のエネルギー問題とストック住宅の性能

・省エネルギーの歴史

・建築業界の省エネ法の改正

・これからの取り組み

 

 

住宅歴史編


なぜ高性能(高気密高断熱)の家が増えてきているの??

それは住宅の歴史にあります。現代から近年の住宅事情を抜粋してお伝えいたします。

 

 

『スクラップアンドビルドの家の出現』

 

戦後から高度経済成長期にかけて慢性的な住宅不足を背景に「質より量」の住宅供給が主流にならざるを得ない時代が続きました。集合住宅地(団地)や出来上がった家を借りる、買う人が大半でした。この頃は住宅性能を重視して家を建てるという人は少なかったのです。

 

 

 

『高度経済成長期のライフスタイルの変化』

高度経済成長にともなう変化はライフスタイルにも大きな影響をあたえました。日本の主要産業は農業から工業化へ変化し、たくさんの企業や事業所が誕生し雇用の場が増え農村部から都市部への人口流入が生じ核家族化も、この頃からはじまりました。これによって農業が主要産業だった戦前は、家が生活の場であると同時に生産の場でもありましたが、戦後の産業発展以降は、働きの場を自宅から工場や事務所に変わり父親が自宅から職場へ通勤する、主婦と子どもが在宅する、夫婦共働き等様々なライフスタイルが増えはじめ、家への要望も多様化しました。

 

 

この頃の大きな変化の一つに間取りがあります。

 

以前の日本家屋(古民家)では台所は家の裏手北側に配置されることが多く、これは冷蔵庫などの保存の技術が発達していなかった為、台所と食事室と離れていました。

 

新しい住居の形態は家電製品の普及ともに西洋文化の間取りも取り入れられ、食事は台所あるいはダイニングキッチンで食べる。設備のキッチンは効率的で省スペースのステンレス流し台又はシステムキッチンへと変わり、水洗トイレ、お風呂も備えた家が徐々に増えました。

 

 

 

 

『現代の家づくりの問題点』

 

・質より量で建てた建物は老朽化が早い。

・地震で損壊してしまう恐れがある。

・寒い、暑い。

・家の中で高温多湿になり熱中症の危険性がある。

・結露でカビが生える。

・お風呂場でヒートショックを起こるリスクが高い。

・複合的な理由での健康被害。

・暑さ寒さ回避する為に電力を使いすぎている など…

 

 

『日本の住宅性能は遅れている、だから進化する』

ここ近年の住宅及び住環境は、生活しやすい間取り、地震時の安全性、夏は涼しくて冬は暖かい室内の快適性、光熱費が抑えられる省エネ性など先進各国のように「量」より「質」に重きを置き「使い捨て」から「長寿命化」へのシフトをむかえています。

長期優良住宅、現在の低炭素住宅、ZEH(ゼッチ)など、国が推奨する住宅性能基準は、これからの次世代の家の通過点に過ぎません。今の時点で一歩先を進んだ家づくりが当たり前の時代がやってくるのです。

高性能住宅の需要


2009年以降のスマホの普及と共に住宅を選ぶプロセスの段階に変化があります。
これまでの住宅展示場、雑誌、知り合いからの紹介に加えてインターネットでの情報収集がくわわりました。

 

住宅を選ぶプロセス

① あたらしい家での暮らしをイメージする

※抽象的な段階。好きなテイスト、デザインを知るきっかけ

 

② 想像する暮らしに必要な要素や条件の情報収集

※具体的になる段階。住宅展示場やオープンハウスに訪れたりして気になるキーワードなどを知るきっかけ

 

③ 2で収集した情報を整理する

 

 

 ④ あたらしい家の必要条件が明確になる

 

 

 ①~④のプロセスで、あたらしい家での暮らしを、理想に近づけるために、情報収集は欠かせない要素です。これ以上に大切な要素が『③収集した情報を整理する』です。収集した情報を実現するにあたって予算、必要性、費用対効果、メリット、デメリットなどを検討することであたらしい家のテーマ(基本理念)が決まります。

 

④段階で住宅性能がよい家を希望する方が増えたことが冒頭の答えになります。

高性能住宅と言うキーワードも数年前に比べると増えました。出版物、インターネットの記事、動画などさまざまなツールから発信され、情報量も増えました。

こちらでお伝えしたいことは
高性能=いい家と安易に認識せず、住宅性能を数値で確認して選んでいるか??がこれからの家づくり重要なことだと私たち考えます。2021年4月からは契約時に必ず家の省エネ性能の説明が義務化されているので、契約の時に家の省エネ性能を初めて知った!!となる方もしばらくはいらっしゃるかもしれません。

 

私たちが出来る家づくりのサポートとしては


・事前のヒアリングでお客様が希望する住宅性能を把握すること

・お客様が希望された住宅性能の家を設計・施工出来ること


これらを住宅会社選びの確認項目に入れてみてください。

 

 

日本のエネルギー問題とストック住宅の性能


今回の題材となった高性能住宅が増える理由と家の省エネ性能は必要か?が本質となります。

世界的に環境意識が高まるなか、日本もさまざまなエネルギー問題を抱えています。

 

日本のエネルギーの需要と供給バランスは、2020年末から2021年はじめに訪れた寒波によって、おきた電力不足の報道で再確認したのではないでしょうか。なぜ電力不足はおきたのでしょう??


大きな要因の一つは
寒波による冷え込みで暖を取るために多くの家庭が電力を必要としたためです。


下の 国土交通省の『我が国の住宅ストックをめぐる状況について』の資料をご覧ください。

 

こちらの資料を見てお伝えしたい事は、冬が寒いのは当たり前ですが、寒くても断熱性能が高い家であれば、少ないエネルギーで暖をとることが出来ます。しかし、日本の既存住宅は無断熱の32%の家と断熱性能が低い家(冬の期間室温が10以下になる家)58%で、日本の家は90%が断熱性能・気密性能が低く燃費の悪い家なのです。

今回の様に、日本列島に寒波が到来し、私たちは生命・健康を維持するためにエアコンや暖房機器を可動する。それは、当たり前の行動ですが、同時間帯に90%の日本の世帯が電気を使用すると電力不足になります。

電力不足ならもっと発電すればいい!!

そう簡単なものではないのです。
なぜなら日本は2011年以降、
エネルギー自給率の低下、エネルギー加工コストが上昇、国際的にはCO2排出量の削減率が増えるなどの課題に直面しているのです。

 

 

我が国のエネルギー自給率(2018年)

出典:経済産業省 資源エネルギー庁 2020 日本が抱えているエネルギー問題より

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2020_1.html

 

 

 

日本の化石燃料輸入先(2019年)

2050年に向けて、さらにエネルギー問題と向き合う必要がある私たちの暮らし。

省エネが当たり前の時代がすぐそこまで来ています。


 

 

 

地球規模の省エネ活動のきっかけ


大きなきっかけは、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発をテーマにした国連会議、地球サミット(国連環境開発会議)でした。

 

1992年地球サミットの概要

・気候変動を抑制するために大気中の二酸化炭素濃度を削減する国際的な枠組み

・地球上の生物多様性「種」「遺伝子」「生態系」の要素で包括的に保護・保全・生物資源の持続可能な利用を行う

・森林の保護・育成を世界規模で協力する

・持続可能な開発を実施するために各国政府が取るべき自主的行動計画のアジェンダ21

 

アジェンダ21は、2015年に2030アジェンダとして採択しされ「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」となりました。

省エネの歴史 時系列に並べてみた


1979年 省エネ法(正式名:エネルギーの使用の合理化に関する法律)

日本は1973年と1979年に起こった2度のオイルショックで、エネルギーの管理体制とエネルギー使用の合理化に向けた基本方針を打ち出した。

その後、日本は昭和から平成へと変わり、家電をはじめ、エレクトロニクス業界の最盛期で、自動車産業とともに産業の中心を担ったのもこの頃です。

 

 

 

1991年 ドイツの物理学者ファイスト博士が考案したパッシブハウスの省エネ基準が確立される。
パッシブハウスの超高性能な省エネ基準と厳しい評価方法は世界的にみても高い性能基準となり世界基準の断熱性能のフラッグシップとなる。

 

 

 

 

1992年 地球サミットで「気候変動に関する国際連合枠組条約」地球温暖化対策に世界規模で取り組む事が決まる

 

 

1997年 地球温暖化防止京都会議(COP3)で温室効果ガスの削減目標が打ち出される。日本は1990年比で2008~2012年に6%の温室効果ガスの排出量削減を義務付けられ、ここからの排出量削減を数値化した具体的な取り組みが始まります。

 

 

 

1998年 省エネルギー法改正 トップランナー制度

 日本政府は機器の製造メーカー・輸入事業者に対し、温室効果ガスの削減を満たす高い省エネ基準の製品開発、技術進歩を求め、製品へ目標年度と省エネ基準の達成率を報告する制度を設けました。

 

 

 

 

2000年 JISによって省エネルギーラベリング制度導入

製造業者・輸入業者が省エネ性能をラベルで表示し、省エネ機器の普及を促進する取り組みが始まる。

 

 

 

2000年  低排出ガス車認定制度導入

    自動車の排気ガスによる有害物質の排出カズ規制値がどれくらい削減されているか示す制度が始まる。 

 

 

 

2000年 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が公布される 住宅性能表示制度により住宅の性能基準(H11基準:次世代省エネ基準)、共通ルールが設けられ、消費者による住宅性能の相互比較を可能にする取り組みが始まる。日本を都道府県ではなく気象、気候が近い地域を6つに分けたものを、地域区分といい6区分に分かれた。住宅性能をしめす値、Q値・μ値・C値の性能基準値が導入される。

 

 

 

2004年 燃費基準達成車ステッカーの運営開始

一般消費者が自動車の燃費性能に関心が向くようにステッカー表示、カタログに記載が始まり、エコカーの普及を推進する取り組みが始まる。

 

 

 

 

2006年 小売事業者表示制度

消費者と直接接点のある家電機器等を販売する小売業者が、陳列商品の省エネ性能を表示し情報提供するための制度です。

今では当たり前になった商品価格と省エネ性能の両方を表示する家電選びはこの年から始まりました。

 

 

 

 

 

 

ここから現在に直結するあゆみ

 

 

 

2009年 建築物省エネ法改正

住宅でも「トップランナー基準」が採用される。

研究者、住宅・建材生産者団体によってHEAT20「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」が発足される。

この頃、日本で最初のパッシブハウスが建築され、世界の先進国の住宅と日本の住宅が比較され始める。

 

 

 

 

2012年 国土交通省、経済産業省、環境省が共同で設置した「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」により、2020年までに住宅やビルなどすべての新築建物が省エネ基準適合する動きがおこる。

 

 

 

 

 

2012年 省エネ法改正 2013年より施行

住宅性能に外皮の断熱性能の計算方法が加わり建物省エネ性能と設備機器を一体化して建物全体の「一次エネルギー消費量」を総合的に評価する仕組みになる。断熱性能地域区分が6区分から8区分に改られ、Q値が基準から外され、Ua値・ηA値の性能基準値が導入される。住宅の性能基準がH25省エネ仕様基準が採用される。

 

 

 

 

2015年 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)が公布される。

建築物省エネ法の公布により住宅の性能基準がH28省エネ仕様基準が採用される。

COP21にむけた約束草案の一部となる地球温暖化対策で「省エネ基準適合義務化」がうちだされる。そこには、2020年以降、平成28年基準を下回る断熱性能の住宅は新築許可が下りないという内容でしたが先送りになりました。

 

 

 

 

2015年 気候変動枠組条約締約国会議COP21がパリで開催。

2020年以降の対策について話し合われる。

 

パリ協定


2016年 温室効果ガス排出削削減の新たな国際ルール「パリ協定」が発効される。

 

 

パリ協定の主な内容

世界全体の平均気温上昇を産業革命(18世紀半~19世紀頃)前に比べ2℃より低く抑える。

さらに、温暖化対策をおこない気温上昇を1.5度までに抑える努力をする

 

 

すべての国が温室効果ガスの削減目標をつくる。

日本政府は、2030年度の温室効果ガズの排出を2013年度と比較して約26%削減する目標を定め、2050年には「カーボンニュートラル」という目標掲げています。日本が目指す「カーボンニュートラル」とは、「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを意味しています。

 

 

 

建築業界の省エネ法の改正


建築業界では「省エネ基準適合義務化」の進捗は2021年3月現在でこうなりました。

 

 

 

 

2017年4月 建築物省エネ法改正の施行 ※画像左側

建築物の省エネ基準適合(H28省エネ基準)の義務化

義務化になったのは、オフィスビルやホテル、商業施設などの大規模建築物(2000㎡以上)新築建築物のみ

 

 

 

2019年5月 建築物省エネ法改正 ※画像右側

 建築物の省エネ基準適合(H28省エネ基準)の義務化ならびに説明義務化の公布。

 

 

2021年4月 建築物省エネ法改正の施行 

建築物の省エネ基準適合義務化に追加されたのは、オフィスビルやホテル、商業施設などの中規模建築物(300㎡以上)新築建築物のみ

300㎡未満の住宅は、2021年4月から省エネ性能の説明義務となります。

 

 

これからの取り組み


日本は1997年の京都議定書からさまざまな省エネ、温室効果ガス削減に向けて中期的な取り組みをしてきましたが、パリ協定でも題材になった、地球の気温上昇予測データ↓

 

赤線:現状を上回る温暖化対策を取らなかった場合
青線:厳しい温暖化対策をとった場合

 

 

なぜこのデータを再度クローズアップしたかは

現状を上回る温暖化対策を取らなかった場合どうなるか??

というシュミレーション動画を環境省が作成しています。

※動画音声あり、再生ボタンを押すと動画がスタートします。ご注意ください。

 

 

<2100年 未来の天気予報
『1.5℃目標』達成・達成 

<2100年 未来の天気予報
『1.5℃目標』達成・達成 

 

このまま有効な対策を執らずに地球温暖化が進行すると、2000年頃からの平均気温が最大4.8℃上昇すると予測されています。

現状よりさらに厳しい温暖化対策の実施が必要とされているこれからの2030年~2050年。

2030年までに2013年度比で26%の温室効果ガスの削減
→2021年4月22日発表『
2030年までに2013年度比で46%の温室効果ガスの削減を目指す』

 

 

2050年までに温室効果ガスの実質0目指す

 

 

この目標を達成するには、政府、産業界、金融界、研究者など、あらゆる分野が協働することが必要とされています。
そして技術のイノベーション(改革)がこれまでの省エネの歴史以上の速さで変わっていきます。

私たち家づくりに携わるものとしては、

 

・これまで以上に高性能住宅の必要性の発信を行うこと

・分かりやす省エネに関する情報の共有
・建物一次消費エネルギーについての情報開示


などをブログの記事、見学会、SNSの投稿でより多くお伝えしていきたいと思います。

今回、最終章の長文にお付き合い頂いた皆様ありがとうございました。
今後は、『エコライフ・エコハウス』にタイトルをかえ、ブログカテゴリー『住宅性能について』の中に書きためて行きたいと思います。

最終章ですが・・・続きます!!

 

4月29日より福山市加茂町に完成するモデルハウスの内覧がスタートします。
 平屋モデルハウスの性能スペック

 

【断熱性能】

Q値:1.59

UA値:0.36

 

【気密性能】

C値:0.2 ※実測値

 

【省エネ性能】

建物年間一次エネルギー消費:141.14 kwh/㎡

 

 

内覧の予約をご希望の方は下のボタンからお申し込みください。